近年トラフィックが急増し、今後も増加していくと考えられている携帯電話のデータ通信。
この急増するトラフィックに対応するため、総務省は以前より様々な周波数を携帯電話(4Gや5G)向けに開放する動きを見せています。
それらの一つとして「2.3GHz帯を携帯電話向けに開放する」という計画があります。日本ではあまり携帯電話向けとしては馴染がない周波数なので、今回はこの2.3GHz帯についてまとめていこうと思います。
2.3GHz帯とは?
携帯電話向けとしては、標準化団体3GPPにより2300~2400MHzで標準化されている周波数帯となります。TDDの周波数で、上りと下りは同じ帯域で利用します。
LTE(4G)バンドではB40、NR(5G)バンドではn40となり、1搬送波あたり運用できる最大帯域幅はそれぞれ20MHz幅、100MHz幅となります。
4Gと5Gで周波数を共有するDSS(ダイナミック・スペクトラム・シェアリング)も標準化予定とされている周波数となり、4Gおよび5Gでの同周波数・同時運用も検討可能となっています。
今回日本で携帯電話向けに割当を行う予定の周波数は、2.3GHz帯のうち2330~2370MHzの40MHz幅のようです。
このバンドはアジアでも既に4Gで導入されている国や地域が比較的多く、中国やインドなどでも採用例があります。またオーストラリアやインドネシア、ブラジルでは5Gでの導入例があります。
なお日本の携帯電話に割り当てられている周波数についてはこちらをご覧ください。
条件付きの割り当てになる模様
一方でこの周波数は商用化に条件があります。この帯域は現在テレビ局が屋外での中継に利用している周波数そのもので、これとお互い干渉せずに共存するためダイナミック周波数共用(時間帯・場所での電波用途使い分け)を前提としています。
つまりテレビの中継がある場合は、その周辺にある2.3GHz帯の携帯基地局の電波を止めなければなりません。
またテレビの中継とは別に公共業務でも利用されているので、もちろんこれらとも干渉を避けてエリア展開を行う必要があります。
この共用することとなるテレビ中継の利用頻度は2018年11月から1年間の統計で以下となっており、最も頻度が高い東京都の日中は60%程度の頻度となっているようです。
日中は都道府県によってかなりのばらつきがありますが、ほとんど携帯電話の電波を停波せずに済む地域も存在するようで、また夜間は全国で利用頻度が低いという結果になっています。
最低でもテレビ中継が行われる地点から半径20kmの範囲が停波することになるので、都区内での有効活用は難しそうです。
なおこの中継は移動しながら利用するケースもあるので、その場合は更に停波範囲が広がるでしょう。
現時点での対応機種は限定的
日本では2.3GHz帯に対応する機種は現時点(2021年7月現在)で少ないです。
4GのB40であれば高い機種だと特にローミング向けで対応していることが多いですが、5Gのn40に至ってはキャリア・SIMフリー関係なく5G対応Google PixelとiPhone、これらに加えてROG Phone 5程度しか対応していません。
後から対応させるという作業もコストがかかったり物理的に難しかったりするので、商用化したとしても当面の間使える機種は限定的になりそうです。
また、総務省の資料ではLTE-Advanced(4G)およびNR(5G)での利用を想定して計画を進めているようですが、4Gで運用する可能性はDSSも含めて低いと思われます。既存周波数の転用ならまだしも、わざわざ新しい周波数をDSSで運用する事業者側のメリットが少ないからです。
まとめ
今回対象となる帯域幅は5Gの周波数としては若干少なく、4Gの周波数としては多いという微妙な広さです。とはいえ確実な容量の増加および速度の向上は見込めるでしょう。
一方で商用化の条件がかなり多く、正直あまり使いやすいとはいえない周波数なので、積極的に取得しようとする事業者が現れるのかが気になる点ではあります。
2021年度までには割り当てが行われるようなので、今後の動向に注目したいところです。
他ソース
総務省|報道資料|「新世代モバイル通信システムの技術的条件」のうち「2.3GHz帯における移動通信システムの技術的条件」 (soumu.go.jp)
iPhone 12とiPhone 12 mini – 仕様 – Apple(日本)
Google Pixel 4a (5G) の技術仕様 – Google ストア
ROG Phone 5 | ROG Phone | Gaming スマートフォン | ROG – Republic of Gamers | ROG 日本 (asus.com)
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