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GalaxyのフラグシップシリーズであるSシリーズやNoteシリーズには地域によるチップ差があります。
特別行政区や台湾を含む中国や日本、アメリカなどの一部地域ではトップメーカーかつ評判の高いQualcommのSnapdragonを、その他の地域では基本的にサムスン自社のExynosというチップが搭載されています(ただし2020年モデル、2022年モデル以降では例外で韓国版でもSnapdragonでした)。
スマートフォンでは心臓部分ともいえるようなこのCPUといったシステム・オン・チップ(SoC)が地域によって異なるという点は以前から問題視され、パフォーマンスに差がある(Exynosモデルが劣っている)と欧州などのExynosモデルが販売される地域では、わざわざSnapdragonのモデルを輸入する人まで存在します。
そこで筆者は「チップによる差がどれだけ存在するのか?」と気になったので、懲りもせず今年も比較をしていきたいと思います。
去年のS20+で比較を行った記事もあわせてご覧ください。
今回はGalaxy S21 Ultraで比較を行いたいと思います。なお、Exynos版は韓国キャリアKT版(SM-G998N)、Snapdragon版は香港版(SM-G9980)となります。
メモリ・ストレージは同じですが、シングルSIMとデュアルSIMモデルで若干仕様が異なるため、その点はご了承ください。
各チップのスペック表を比較
以下簡単にまとめた各チップのスペック表です。ソース元の情報を主に記載していますが、端末本体側で確認した情報も含まれています。
Exynos 2100 | Snapdragon 888 | |
CPU① | 1x Cortex-X1 @2.91GHz | 1x Cortex-X1 @2.84GHz |
CPU② | 3x Cortex-A78 @2.81GHz | 3x Cortex-A78 @2.42GHz |
CPU③ | 4x Cortex-A55 @2.21GHz | 4x Cortex-A55 @1.80GHz |
GPU | Mali-G78 MP14 @?Hz | Adreno 660 @840MHz |
モデム | DL 7.35Gbps/UL 3.67Gbps | DL 7.5Gbps/UL 3.0Gbps |
プロセス | Samsung 5nm | Samsung 5nm |
Snapdragon側はCPUの名称をKryo 680としていますが、ベースはExynosと同構成のARMアーキテクチャである模様です。
チップ自体は共にミリ波に対応していますが、特例などの試験運用を除きミリ波を商用化している国がS21シリーズ発売時点で日本とアメリカ(どちらもSnapdragonの地域)くらいしかないので、Exynos 2100搭載のミリ波対応製品は今のところ一般販売されていないと思われます。
今回通信速度の比較検証は行いませんが、それぞれのネットワーク検証に関しては個別で行っています。
ベンチマークスコア
最も問題視されている性能差といえば、ベンチマークスコアの優劣です。
こちらについては実機でAnTuTu v9とGeekbench 5を代表のベンチマークスコアとして計測しました。
- AnTuTu V9.0.12(オープンベータ)
こちらのベンチマークアプリは総合的なパフォーマンスを評価するものです。CPU・GPU性能はもちろんのこと、メモリ・ストレージ性能やユーザーエクスペリエンスも評価の対象となっています。
なお、どちらもFHD+の解像度でリフレッシュレートは高設定、デフォルト設定の通常モードで計測しています。
左がExynos 2100、右がSnapdragon 888です。
若干差があるものの、約4%のスコア差と去年の約10%差よりもかなり差は縮まっています。どちらもフラグシップ性能と言えるでしょう。
- Geekbench 5.4.1
こちらのベンチマークアプリはCPUのパフォーマンス評価に特化したものです。GPUのパフォーマンス評価も別途可能ですが、今回は割愛します。
こちらも同様に左がExynos 2100、右がSnapdragon 888です。
やはり数値でいえばSnapdragonに軍配が上がるものの、どちらもシングルコアは1100前後、マルチコアは3400~3600で落ち着いている印象です。
ベンチマークスコアではどちらもSnapdragonが勝つという結果になりましたが、実際に使っていてアプリの起動速度やレスポンスに体感するほどの差がある、といったようなことはなく、正直差を感じることは一切ありません。どちらも非常に快適です。
ただしTwitterに関してはSnapdragonだけにしか最適化できていないのか、Exynosモデルだけ高リフレッシュレートでのスクロールが少しカクつきやすいようです。ただ、アプリ側のアップデートの度に改善されているので、そこまで気にしなくて良いと思います。
ちなみに普段使いの発熱に関してはどちらも顕著なものはなく、共に安定しています。去年までは結構な差があり、Exynosモデルのほうが発熱しやすい傾向にあったのですが、今作ではかなり改善されたようです。これはハードウェアによるものなのか、ソフトウェアの制御によるものなのかは不明です。
バッテリー持ち
100%から79%まで、ChromeでネットサーフィンやYouTube観賞、Twitterでのタイムライン閲覧などをローテーションし、できるだけ同じような使い方をして比較検証を行いました。
左がExynos 2100、右がSnapdragon 888です。
起動時間は異なりますが、画面オン時間は4分差とほぼ同じであることが分かります。よって、電池持ちは誤差レベルでありほぼ同等であると言っても差し支えないでしょう。
去年の比較では明らかにExynosモデルの電池持ちが悪いという結果となっていたので、ここは大きな進歩であり、去年より確実に差が縮まっていると感じます。
カメラ(静止画)
近年のスマホカメラはAIによる画像処理で各社差別化を図っているので、特に静止画はチップの処理能力が大きく関わってきます。昼間に撮影したメインカメラ・超広角カメラ・10倍望遠カメラの写真をそれぞれ比較してみます。
以下全ての撮影がオートです。
※プライバシー保護の観点から一部加工しています。
メインカメラ・超広角カメラ共にSnapdragonモデルのほうが全体的に寒色寄りで、特に空の色は差が顕著に出ています。
優劣の差というよりは写り方・癖の違い程度のようです。人によってそれぞれ好みが分かれそうですが、どちらもよく撮れています。
10倍望遠は更に顕著に差が現れました。
Snapdragonモデルのほうがディティールは細かく描写しており、かなりシャープネスです。また引き続き全体的な色味は寒色寄りです。
一方ExynosはSnapdragonより自然ですが、全体的にぼんやりとした印象を受けます。
トリミングすると分かりやすいでしょうか。もしかすると画像処理チップの能力の差なのかもしれません。
望遠としての用途だけで言えば解像感のあるSnapdragonのほうが有利ですが、Exynosだと文字が潰れる…というほどでもないので、そこまで劣っているとも言えなさそうです。
韓国版各モデルの仕様差(余談)
今回検証したExynosモデルは韓国版、Snapdragonモデルは香港版ですが、どちらもSIMロックはかかっておらず、欧州版に存在するリージョンロックもありません。
ただし、韓国版は日本でいうSIMフリー版を指すオープンマーケット版(サムスン直販モデル)とキャリア版(各キャリアの3種)の合計4種類が存在します。
前者は香港版同様キャリアのチューニング等は基本的にありません。一方で後者は日本と同様でキャリアによるチューニングが施されており、SKテレコム版、KT版はアプリ一覧で1ページ丸々埋めてしまうくらいのキャリアアプリが工場出荷状態の時点で入っていたりします。
LG U+版は比較的キャリアアプリが少ないですが、設定の項目にキャリア専用項目が存在していたりと、やはりキャリアによるチューニングが施されている点は変わりありません。
なお、それらのアプリはドコモ版と違ってほとんど削除および無効にすることができるので、最初の消す作業が面倒なだけです。
ちなみに韓国も日本と同様でキャリアでの端末購入が大半かつ一般的なので、オープンマーケット版は結構レアです。日本に流通する韓国版は大半がキャリア版となります。
ハードウェア自体にほとんど違いはなく型番も全く同じですが、これらはブート画面がそれぞれ異なるので、電源を付ければすぐに見分けることができます(正確な情報は『設定』→『端末情報』→『ソフトウェア情報』→『サービスプロバイダのソフトウェアバージョン』で確認することができます)。
なお日本では誰もそんな違いは気にしていないので、実質数万円のソフトウェアガチャです。楽しいですね。
※キャリアアグリゲーションや対応バンドに関しては、筆者の調査した限りは韓国版であればどれも同じです。
まとめ Exynosが今作で大幅に改善
去年のExynos 990とSnapdragon 865では様々な点でかなり差があり、同じ値段ならSnapdragonのほうが圧倒的に良いという残念な結果になっていましたが、今回は静止画くらいしか大きな違いが見受けられませんでした。
スピーカーやワイヤレスイヤホンでのオーディオ品質に関してもほぼ同等という結果でした。
去年で問題となっていたExynosの反省点を今年で相当数改善しており、サムスンの不断の努力を感じます。
S21シリーズに関してはExynosモデル・Snapdragonモデル問わずどっちでも良いと思います。
なお、S21シリーズはグローバルに則った型番規則でいうと
- SM-G99XU1(米国向けSIMフリーモデル)
- SM-G99XU(米国キャリア向けモデル)
- SM-G99X0(中国地域向けモデル)
- SM-G99XJ(日本キャリアau版)
- SM-G99XD(日本キャリアdocomo版)
のいずれかがSnapdragon 888搭載モデルとなります(筆者調べ)。
逆に言うと、ここに記載のない型番であればExynosモデルということになります。S21、S21+、S21 Ultraといったバリエーションの違いでXの値にそれぞれ1、6、8の値が入ります。
※S21 FE(X=0)は例外でExynosモデルが販売されている地域でもSnapdragon 888を搭載するとの情報が上がっているので、こちらのバリエーションはこの表を参考にしないほうが良いです。
S21シリーズおよびS21 Ultraの購入を検討されている方に参考になれば幸いです。
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