GalaxyのOS容量が60GB以上という情報は誤り、非常に大きく表示される理由を解説

Ars Technicaが「GalaxyのOS容量は60GB以上ある？」といったような内容の記事を更新し、テック界隈で話題になっています。日本でもGigazineが翻訳記事を投稿したためか、広く拡散されています。

しかし、これらの情報は厳密に言うと正しくありません。

Galaxyを扱うサイトとして誤った情報が拡散され続けるのは放っておけないので、Galaxyのシステム容量が非常に大きい(ように見える)理由を解説します。

「全てのファイルへのアクセス」を許可していない
GiBとGBの”差”を容量として表示
まとめ

「全てのファイルへのアクセス」を許可していない

そもそもGalaxyのシステムであるOne UIでは、ストレージの内訳、とくにアプリ(Apps)のストレージ使用量を見るにあたって「全てのファイルへのアクセス」を「マイファイル」というアプリに許可しなければなりません。

Alex Maxham氏の投稿をよく見てみると、アプリ(Apps)の項目の右側にiマークが表示されていることが分かります。これは「マイファイル」に「全てのファイルへのアクセス」を許可していない状態です。

これを許可しないとアプリのストレージ使用量は表示されず、システムは「アプリ+システム」の合計値※で表示されてしまいます。

なお、これを許可している場合は以下のように表示されます。

※2023/02/08 17:20追記:

アプリの容量が「システム」に表示されるのはOne UI 5以降のみとみられます。

One UI 4など以前のバージョンではマイファイル未許可の場合、アプリの容量が「その他」に分類されるとの報告をいただきました。

GiBとGBの”差”を容量として表示

それでもなおシステムの容量は非常に大きいように見えます。しかし、これにもまた理由があります。

これは2進数と10進数による計算容量の差を「システムの容量」としてカウントしているためです。Golden Reviewer氏が解説しているので、簡単に翻訳しつつ更に掘り下げます。

Because of the 1000 vs 1024 conversion, you always "lose" about 7% of storage marketed by manufacturers. 1TB HDD ~930GB usable, a 512GB phone ~476GB usable etc..
Windows shows you the actual usable number(e.g. 930GB), this actually caused a lot of confusion and questions .
— Golden Reviewer (@Golden_Reviewer) February 7, 2023

これにはまず「データ容量の表記にはSI接頭辞と2進接頭辞の2種類が使用されている」という前提知識が必要です。

要するに底を10とするか2とするかの違いですが、文章を読むよりも表を見る方が分かりやすいと思うので、以下それぞれの表記の対応表をご覧ください。

	SI接頭辞の値		2進接頭辞の値
KB	10^3=1,000	KiB	2^10=1,024
MB	10^6=1,000,000	MiB	2^20=1,048,576
GB	10^9=1,000,000,000	GiB	2^30=1,073,741,824
TB	10^12=1,000,000,000,000	TiB	2^40=1,099,511,627,776

以上のように、SI接頭辞と2進接頭辞には値の差が存在しており、これは容量が大きくなればなるほど拡大します。

我々が普段目にするデータ容量の表記にはSI接頭辞が使用されていますが、コンピュータは2進接頭辞で計算しているため、この”値の差”により実際に利用できる容量が見かけ上少なくなってしまうのです。

例えば128GBは約119.2GiBになり、我々が想像している容量と実際に利用できる容量には約9GBの差がある、ということになります。

なお256GBではこの差が約2倍(約18GB)、512GBでは約4倍(約35GB)…と増えていきます。

Windowsでは実際に使用できる2進接頭辞が表示されますが、一部のAndroidメーカーではこの差を「システム」の容量に組み込んでいます。もっと言えば、同氏によるとSI接頭辞と2進接頭辞を理解していない人による「容量詐欺ではないのか」というクレームを回避するため、実際には存在しない容量を加算しているとのこと。

例えば128GBのモデルの場合、「システム」の項目は「実際のOS容量」に加え「128GB(約119.2GiB)と128GiBの差約9GB」などの合計が表示されている、ということになります。

One UIも実際には存在しない容量の差をシステムに加算していることから、システムの容量が見かけ上非常に大きくなっているというわけです。