楽天モバイルはプラチナバンドを取得できるのか?候補の帯域と課題まとめ

コラム

「楽天モバイルは繋がりにくい」、そういうイメージを持たれている方は多いのではないでしょうか。

その理由の一つにプラチナバンドがないという点が挙げられます。

プラチナバンドとは、一般的に1GHz未満の周波数の電波を指します。比較的屋内にも浸透しやすい周波数のため需要が高く、簡単に取得できないことからこのような呼称が定着しました。

楽天モバイルが運用できる最も低い周波数は1.7GHz帯のため、プラチナバンドが使用できる他社MNOと比較して屋内で繋がりにくかったり、エリア確保にあたって不利となっているのが現状です。

そのため楽天モバイルはプラチナバンドを政府に要求しているわけですが、具体的に取得するとなればどういった周波数が考えられるのでしょうか。

素人ながら候補として挙げられる周波数と、その課題をまとめてみました。

※あくまで素人が勝手に考えただけなので、非現実的なものも含まれています。参考程度に留めておいてください。

選定する周波数の前提条件

まずこのプラチナバンドを選定するにあたって

  • 1GHz未満の上り・下り通信で帯域を分けるFDD方式である
  • 既に標準化されているバンドで運用できる

という条件を基本として、候補を絞り込みます。

以前楽天が主張していた周波数(PDF)以外も取り上げます。

※以下図を用いて周波数の位置関係を可視化しますが、楽天モバイルの候補帯域はマゼンタで、既存の携帯電話以外の帯域は黒で表します。青は既存の携帯電話の周波数です。

候補①:600MHz帯

アメリカで現T-Mobileが運用しているバンド71の帯域で運用する案です。

日本ではテレビ放送・特定ラジオマイクなどで使用されている帯域と重複していますが、全ての地域で全ての帯域が使用されているということは、あまりありません。多少は空きのチャンネル(ホワイトスペース)が存在します。

この600MHz帯で大掛かりなチャンネル整理を行い、テレビ・特定ラジオマイクなど既に利用されている帯域の間に割り込んで携帯電話のプラチナバンドを運用するという案です。

図1:600MHz帯

楽天モバイルが使用する5MHz幅x2~10MHz幅x2と、干渉を避けるためのガードバンドを各8~10MHz程度設けると仮定します。40チャンネル程度あるうち600MHz帯に該当する箇所で4~8チャンネル分の空きを作れば、既存の電波と楽天モバイルのプラチナバンド(仮)を静的に共用できる可能性があります。

このチャンネル整理を最小限に留めるため、楽天モバイル側が帯域幅、および運用する周波数を少しずつ地域によって変更する必要があるかもしれません。

アメリカにおいては州などといった地域ごとに異なる周波数で運用する、ということがよく行われているものの、日本で法的にこれを実現できるかは不明です。

また、もしこの周波数が運用できたとしても、日本で流通しているスマートフォンでこのバンドに対応しているものはほとんどありません。かろうじて最近のiPhoneが対応している程度です。

つまり、楽天モバイルユーザーの大半は機種変更が必要になるでしょう。

加えて携帯電話向けとしては極端に低い周波数のため、4.5GHz帯(n79)同様にアンテナ設計においてコストが嵩むと考えられます。

商用化したとしてもこのバンドに対応する機種は限定的となりそうです。

この案は今回の候補で最も現実的ではない周波数です。当然楽天モバイルはこの周波数をプラチナバンドとして候補に挙げていませんが、実現すれば面白そうなので取り上げました。

候補②:700MHz帯

テレビ・特定ラジオマイク・ITS(高度道路交通システム)の周波数を移行する形で、楽天モバイルが700MHz帯を取得する案です。

ITS700MHz帯(755-765MHz)は国際標準の5.9GHz帯へ移行、特定ラジオマイクやテレビなども別のチャンネルに移行することになるでしょう。

図2:700MHz帯

もしこの帯域を取得するとなれば、他社と同様バンド28として運用することになります。他社の機種を含めても、比較的多くの機種で利用することができそうです。

一部非対応の機種を利用している顧客は当然機種変更の必要が生じますが、前述の600MHz帯ほど手間とコストはかからないでしょう。

なお、楽天モバイルはこの周波数を自社のプラチナバンド候補として挙げていません。

候補③:800MHz帯

auとドコモが現在運用している帯域を一部取得する形で、楽天モバイルがバンド26等を運用する案です。

図3:800MHz帯

楽天モバイルでは、auおよびドコモの3G帯域をそれぞれ奪い取る案を挙げているようです。

当然auとドコモの2社は反発するでしょうが、電波の割当は政府(総務省)次第と言っても過言ではありません。

この2社は3Gの帯域を停波後に有効活用していなければ、楽天にその帯域が渡ってしまう可能性も十分に考えられます。

なおこの帯域は10MHz幅x2で運用する場合、理論上バンド5および26でしか運用できません。

またドコモのFOMA停波時期は2026年と当分先であるため、当初はau側の5MHz幅x2のみで運用することも考えられます。その場合はバンド18でも運用が可能です。

顧客視点だと、最も使用上に影響のない周波数でしょう。顧客の負担が低いことから、楽天モバイルが特に要求している候補になっているのだと考えられます。

候補④:900MHz帯

ソフトバンクが現在運用している一部帯域を奪う形で、楽天モバイルがバンド8を運用する案です。

図4:900MHz帯

こちらも800MHz帯と同様で、ソフトバンクの3G帯域の停波以降に、同周波数で楽天モバイルが運用するという案です。

4Gではバンド8を10MHz幅x2より広い帯域幅で運用することはできません。ソフトバンクがそのほかの用途で有効活用しない限り、楽天モバイルにとっては狙いやすい周波数かもしれません。

ただし5MHz幅x2と他社よりも半分の帯域幅であるため、今後トラフィックの逼迫が心配となりそうです。

この周波数もグローバルで多く採用されているバンドのため、4G・5Gどちらで運用するにしても比較的ハードルは低いでしょう。

まとめ

いずれにせよプラチナバンド新規割当は、どこかの帯域を犠牲にして廃止・または移行をしなければ実現できません

いくら廃止や移行に必要な費用を楽天モバイルが支払うとしても「既存免許人が座っていた座席に我々(楽天モバイル)を座らせろ」と言っているようなものなので、既存免許人は良い思いをしないはずです。

いかに企業または団体(業界)を敵に回さず、穏便に済ませるが課題になりそうです。


画像:楽天モバイル

参考

総務省 電波利用ホームページ – 我が国の電波利用状況 335.4MHz~960MHz (PDF資料)

楽天モバイル株式会社 – デジタル変革時代の電波政策懇談会 移動通信システム等制度WG 説明資料(総務省PDF資料)

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