クアルコムは先日、ミドルクラスとしてトップレベルの性能を誇るプロセッサSnapdragon 7+ Gen 2を発表しました。
先代のSnapdragon 7 Gen 1から性能が飛躍的に向上し、AnTuTuスコアが100万点を超えるという噂もあります。
スペックを見てみると非常に興味深かったので、このプロセッサについて考察をしてみます。
スペックがあまりにも似ている
まずこのプロセッサはSnapdragon 8+ Gen 1と非常に似ています。一部抜粋したスペックを並べて比較した表が以下です。なお8+ Gen 1では実機で確認したスペックも含まれています。
名称 | Snapdragon 7+ Gen 2 | Snapdragon 8+ Gen 1 |
---|---|---|
CPU | 1x Cortex-X2: 2.91GHz 3x Cortex-A710: 2.49GHz 4x Cortex-A510: 1.8GHz | 1x Cortex-X2: 3.19GHz 3x Cortex-A710: 2.74GHz 4x Cortex-A510: 2.02GHz |
GPU | Adreno GPU | Adreno GPU(900MHz) |
メモリ | LPDDR5 3200MHz 16GBまで対応 | LPDDR5 3200MHz 16GBまで対応 |
カメラ | 最大2億画素 | 最大2億画素 |
5G | Snapdragon X62 下り最大4.4Gbps (ミリ波4搬送波) | Snapdragon X65 下り最大10Gbps (ミリ波8搬送波) |
Wi-Fi | Wi-Fi 6E対応 最大3.6Gbps | Wi-Fi 6E対応 最大3.6Gbps |
製造プロセス | TSMC 4nm | TSMC 4nm |
型番 | SM7475-AB | SM8475 |
CPUやGPUの周波数や5Gの最大通信速度を除き、Snapdragon 7+ Gen 2とSnapdragon 8+ Gen 1はほとんど同じであることが分かります。
つまりこれらは全く同じラインで製造しており、Snapdragon 8+ Gen 1になれなかった選別落ちのプロセッサをSnapdragon 7+ Gen 2として商品化している可能性が高いです。
CPUにはアタリハズレがある?
結論に入る前に、選別落ちに関して簡単に解説します。
CPUを含めた半導体の製造は、必ずしも全てが均一の質ではありません。基本的に個々の質に多少のばらつきがあります。そのため半導体メーカーは一定の基準を設けており、その基準範囲内を同一名称の製品として出荷するのが一般的です。いわばA5といった和牛のランク分けと似たような仕組みです。
CPUの選別についての話題は以下の動画が非常に分かりやすく、参考になります。動画ではIntelを取り上げていますが、TSMCやSamsungの製造でも同じようなものだと解釈して良いと思います。
TSMCがSnapdragon 8+ Gen 1を製造するにあたっても、この基準を超えることができなかったプロセッサが一定数製造されることは容易に想像できます。
つまりこの”選別落ち”を再び選別し、CPU周波数などを低く設定し製品化したのがSnapdragon 7+ Gen 2なのではないかと考えています。
“ハズレ”でも大丈夫そう
いわば「ハイエンドのハズレ石」なので価格を安価にでき、非常に高性能でもミドルクラスとして提供できるのではないかという考察でした。
ただ「ハズレ」とはいっても製品化するために各種調整を十分に行っているはずなので、実際の使用に際して支障が出ることはまずないでしょう。
また動作周波数が全体的に低いことから、Snapdragon 8+ Gen 1よりもバッテリー持ちは良くなる可能性が高いです。
画像:Qualcomm
参考
Snapdragon 8+ Gen 1 Mobile Platform
Snapdragon 7+ Gen 2 Mobile Platform
Qualcomm Snapdragon 7+ Gen 2 chip supports Samsung’s 200MP cameras – SamMobile
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