「キャリア(MNO)で販売しているスマートフォンに比べて海外版(SIMフリー版)はモバイルデータの通信速度が遅い」という事をなんとなく知っている方も多いのではないでしょうか。
遅いという事実だけ把握しており、具体的に何故遅いのか?という事を疑問に持っている方も多いはずです。
今回はモバイルデータ通信の高度化などについて軽く触れつつ、何故海外版のスマホは通信速度が遅いのかについて解説していきたいと思います。
※端末のスペックによって最大通信速度も変化するため、ここでいうキャリア版は10万円前後の高級機種に限ります。
日本のキャリアアグリゲーションに対応していない
海外版やSIMフリーのスマートフォンでは最も通信速度が左右される技術の一つであるキャリアアグリゲーション(CA)に対応していない、という事が多いです。
キャリアアグリゲーションとは、複数の電波を束ねて通信して通信速度を底上げする技術です。
日本で利用されている電波は他国で採用例のない・もしくは少ないものが多いため、海外版は基本的にCAを行えません。対応バンドもキャリア端末と比べて少ない傾向にあり、それだけ最大通信速度も遅くなるということになります。
よって、各キャリアに最適化されたキャリア版のスマホと比べて遅くなる場合が多いのです。
また複数の周波数を束ねることによって混雑を緩和していたりするので、基地局単位で混雑する場所ではキャリア版よりも著しい速度低下が起こることもあります。
なおMVNOである格安SIMに関しては、基地局単位での混雑よりも先のネットワークで混雑することの方が多いので、au・ドコモ・ソフトバンクといったMNOの契約ほど速度差は生じません。
キャリアアグリゲーションで超高速通信 | 4G LTE/WiMAX 2+ | au
※現在のau最大通信速度とは異なります。
5Gはバンドが対応していても使えない場合がある
4Gの高度化技術を応用した5Gでも同様です。日本の通信事業者の5Gは2021年6月現在、5Gの電波単独では動作しないNSA(ノンスタンドアローン)方式だけなので、4Gの電波と必ず同時に通信する必要があります。そのため、4Gの電波との組み合わせ(ENDC)に合致しないと5Gは利用できません。
加えて機種によっては5Gの利用を事業者単位で許可制(ホワイトリスト方式)にしている場合もあります。なので、バンドが対応していても5Gピクトすら立たないということもあります。
加えて同じ機種でも販売国が異なれば挙動も異なるというケースが多いです。実際にGalaxy S21シリーズでは、欧州向けのモデルは5Gピクトすら立たないですが、香港や韓国などの極東向けモデルであれば5Gを利用できる場合がある、といった差異があります。
Galaxyは機種・販売国によってネットワークの仕様が異なる
Galaxyは同じ型番であっても有効なCAや5Gバンドが異なります。
例えばA52 5G(SM-A5260)やS21シリーズ(SM-G99X0)は香港版や台湾版で全く同じ型番ですが、香港版ではn79を絡めたENDCがn79商用化前の台湾版よりも多く、逆に台湾版では香港でまだ商用化されていないB28を絡めたCAやn28が利用できたりと、ソフトウェアで制御されているため挙動が少しずつ異なります。
なおGalaxyの型番や地域によるバンド差についての解説はこちらをご覧ください。
まとめ
メーカー・機種・販売地域によってモバイルデータの挙動が異なるということが今回の記事でご理解いただけたかと思います。
なお、各MNOが販売している端末が最も最適化されているということは間違いないので、通信速度を気にする方はキャリア版のスマートフォンを購入すべきでしょう。
ちなみにiPhoneの国内モデルは購入元問わず、キャリアアップデートを最新にしていれば全ての日本の通信事業者で各キャリア端末同等の快適な通信を利用することができます。
本サイトでは今後もGalaxyはもちろんのこと、機会があれば他社メーカーのAndroidも実機で検証し、その結果を記事として公開していく予定です。
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