総務省は2022年末より、通信事業者(MNO)向けに700MHz帯の新規割当を検討しています。
この帯域は従来「ガードバンド」として干渉を避けるために空けられていた帯域ですが、一定条件のもとで携帯電話向けの利用ができるのではないか、として検討が進められているものです。
1GHz未満であることから屋内にも電波が浸透しやすい、いわゆる「プラチナバンド」に該当する周波数であり、プラチナバンドを持たない楽天モバイルへの割当が確実視されています。
この周波数はプラチナバンドを持たない楽天モバイルにとって喉から手が出るほど欲しいものでありますが、取得してからの障壁は数多く存在します。
本記事では楽天モバイルがプラチナバンドを取得した際に生じるであろう問題を考えてみました。
狭すぎる帯域
まず新規割当が検討されている700MHz帯は3MHz幅x2の非常に狭い帯域となっています。
他社となるau・ドコモ・ソフトバンクでは4G以降のプラチナバンドを10MHz幅x2で運用しているため、他社比で3分の1以下の帯域幅しかありません。
帯域幅は狭ければ狭いほど理論上通信速度が遅くなり、また収容できる接続端末数も減少します。つまり繋がりやすさを重視し積極的に700MHz帯へ接続する制御にすると、混雑により多くの場所で通信不能になってしまう可能性があります。こうなってしまうと昨今のドコモのように、かえって「繋がらない」という評判になりかねません。
そのため「あくまで現在の主力である1.7GHz帯は主力のままにして、どうしてもこの周波数帯が届かない場合に限り700MHz帯に接続される」という制御を行わなければ、快適な通信を実現することは困難でしょう。
基地局の物理的な問題
楽天モバイルの基地局は15mコンクリート柱の上部にアンテナを取り付けたものが主流です。
しかしこのような簡易的な基地局では、700MHz帯を吹くためのアンテナや無線機などといった設備を新たに取り付けられるのか、強度的に疑問が残ります。
加えて楽天モバイルの基地局は1.7GHz帯でも屋内に電波が届くように、他社よりも基地局の間隔を詰めて置局している傾向にあります。この配置でそのまま700MHz帯を吹いてしまうと、基地局間で干渉が発生し、まともに通信できない状況になる可能性も考えられます。
財務面での課題
上記2点の問題に加えて、金銭的な問題もあります。
現在楽天モバイル単体で4900億円以上の赤字を出しており、1.7GHz帯や5Gの整備だけでも資金繰りが厳しい状況になっています。
こんな状況で新たに700MHz帯を整備すれば、当然ながら更に赤字額が拡大するでしょう。
いくらプラチナバンドで繋がりやすくなったとしても、現在のプランを維持するだけでは損益分岐点が遥か彼方に飛んで行ってしまいます。
そもそも、場合によっては楽天グループ全体が経営の危機に瀕してしまいます。
まとめ
このように、楽天モバイルはこれからも様々な障壁が待ち構えています。
プラチナバンドは獲得してからが本番である、ということは過去のソフトバンクを見れば明らかです。
今でこそソフトバンクはauやドコモに引けを取らない人口カバー率になっていますが、このレベルに達するまでには長い道のりがありました。楽天モバイルも同様に、相当な時間とコストを要するでしょう。
しかしながら、楽天モバイルは当初の計画から5年前倒しで基地局を設置した実績があります。
プラチナバンドの整備にも期待したいところです。
画像:楽天モバイル
参考
狭帯域700MHz帯の割り当てに前進、プラチナバンド再割り当ての混乱は避けられるか | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)
ドコモ「つながらない問題」、今夏までに解消へ – Impress Watch
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