普通のスマホで人工衛星との通信が可能に?T-MobileとSpaceXが提携を発表

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T-MobileのCEOであるマイク・シーベルト氏とイーロン・マスク氏が主催するイベントで、T-MobileとSpaceXの提携が発表されました。

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空が見える場所では理論上どこでも繋がる?

T-Mobileは2023年末までにSpaceXの次世代人工衛星Starlink V2を利用し、基地局の設置が困難な地域でもモバイルデータ通信を利用できるようにするとのことです。

これは携帯電話と人工衛星が直接通信するため、既存の携帯電話を買い替えなくとも利用できるようになるようです。

なおイーロン・マスク氏はTwitterでも本主旨と関連した発言をしており、この衛星通信は概ね2Mbps~4Mbpsの速度となる模様です。

このような衛星通信は理論上、空が見通せる場所であれば通信できるようになるため、海上を含む不感地帯を大幅に減少させることが可能です。しかし同氏の発言からも分かる通り、この衛星通信サービスはあくまで通話やテキストメッセージの送受信ができる程度のスペックに留まりそうです。

とはいえ人命に関わる緊急通報などを行うには必要十分な速度と言えるでしょう。

またStarlinkは数百キロメートル上空を周回する低軌道衛星のため、衛星通信としてはかなり低遅延である点が特徴です。十分な数の衛星を打ち上げれば、地上にある基地局との通信と遜色ない低遅延が見込めるかもしれません。

なお米テックメディアThe Vergeには「旧Sprintを買収した際に取得したPCS帯域を使用する(意訳)」と記載があります。やや古いですがOoklaの記事も参考にすると、PCSのGブロック(上り1910~1915MHz、下り1990~1995MHz)で運用するのではないかと考えられます。

出典:Ookla

つまりこの衛星通信はバンド25で運用される可能性が高いでしょう。

疑問点が多い

しかしながら、この新事業は気になる点が多いです。

北米において、PCS(B2,B25)はAWS(B4,B66)と肩を並べる主力のミッドバンドです。一方でそれ以外の地域、とくに日本を含むユーラシア大陸ではほとんど利用されていません。代わりにDCS(B3)やIMT(B1)が利用されています。

そのためユーラシア大陸で流通する製品においては、PCSに対応していないものが比較的多いです。特にB25はほとんど対応していないのが現状です。そのため対応バンドだけを見たとしても、米国ほど利用するハードルが低いわけではありません。

加えてStarlinkは国際宇宙ステーションと同様に、数時間程度で地球を一周するはずです。つまり特定のエリアを同じ人工衛星がカバーし続けるわけではないため、高度な制御をリアルタイムで行わない限り、このPCSの周波数を世界中に吹き散らすことになります。

またこの周波数帯域は国によって他の用途に使用していることもあります。

少なくとも日本では2022年3月1日時点で、

  • デジタルコードレス電話
  • PHS
  • 準天頂衛星(みちびき)のSバンド

の3用途と重複・または限りなく近い帯域を使用しており、これらとの干渉が想定されます。


商用化の見込みが立ったからこそ公式に発表しているはずですが、北米以外の国ではどのように運用していくのでしょうか。それとも当面は北米以外で運用しないのでしょうか。

既存の電波との干渉を含めて、とても気になるところです。


画像:YouTube

参考

SpaceX

Elon Musk announces Starlink will provide dead-zone coverage for T-Mobile – The Verge

T‑Mobile Takes Coverage Above and Beyond With SpaceX ‑ T‑Mobile Newsroom (t-mobile.com)

T-Mobile’s Spectrum and Coverage in a Post-Sprint World (ookla.com)

総務省 電波利用ホームページ|周波数割当て|使用状況の詳細(令和4年3月1日現在) (soumu.go.jp)

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