Snapdragon865と765Gには5G性能に圧倒的な差がある

5G

(ヘッダーはQualcommより)

2020年に日本で発売された5G対応スマホには、Snapdragon765/765G(以下SD765/765G)搭載機種Snapdragon865(以下SD865)搭載機種があります。

前者は基本的にミドルクラスという扱いで、比較的低価格で5Gを体験できると謳われていることが多いですが、実はSD865機種と比較して5G通信速度に大きな性能差があります。今回はこの差について解説します。

なお、iPhone12シリーズはSD865と同モデムを搭載しており同性能なので、本記事では便宜上SD865機種としています。

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はじめに

かなり専門的な内容になるので、本記事を読むにあたって必要な用語をまず簡単に説明します。

  • キャリアアグリゲーション

複数の電波の「波」を束ねて通信する技術です。束ねる分だけ通信速度はより高速になります。SD865であれば、5CC CA(5コンポーネントキャリア・キャリアアグリゲーション)まで、対応する4Gエリアで利用することができます。

画像はドコモより(auは非公表ですがドコモと大体同じ要領だと思われます)

  • Sub-6とミリ波

5Gで新たに割り当てられた周波数は、Sub-6(FR1)とミリ波(FR2)に分けることができます。

Sub-6は3.6GHz〜6GHzの比較的低周波の波のことで、4Gの周波数に近いためミリ波よりも扱いやすいです。

ミリ波は名前の通り1〜10mmの波長、つまり30〜300GHzの周波数を指すのが一般的ですが、携帯電話の電波としては約24GHz〜53GHzを指します。

ミリ波はSub-6よりも速い高速通信が可能ですが、高周波のため遮蔽物に極端に弱く、雨で減衰するほどシビアだと言われています。本記事ではメインで整備されているSub-6について記述します。

  • NSA方式(5G)

日本のキャリアで利用できる5Gは全てNSA(ノンスタンドアローン)方式です。これは4Gのネットワークを軸(必須)として、5Gの周波数とキャリアアグリゲーションを行って超高速通信を実現する方式です。

この方式は4Gを利用するため、5Gのメリットとして挙げられる低遅延・多接続・超高速通信のうち最後の超高速通信しか実現できません。

Snapdragon865機種は対応しているが…

NSA方式は、4Gでキャリアアグリゲーションを行うことによって5Gの速度を底上げしています。しかし、この最速の理論値はSD865機種のみの対応になっています。

docomoもSD765/765G機種はSub-6受信最大2.1Gbpsである
docomoもSD865機種はSub-6受信最大3.4Gbpsである

このように、SD865機種は4Gでの5CC CAとSub-6単体1波との組み合わせで受信最大3.4Gbpsを実現していますが、SD765/765G機種は4G1波または2波とSub-6単体1波の組み合わせで受信最大2.1Gbpsまでしか対応していません。

1.3Gbpsの差はチップの構造に大きく関係している

この大きな性能差には物理的な構造の違いが関与していると考えられます。

SD865の5Gモデムは外付けになっており、チップと統合されていません。本来は全て統合した方が電力効率などにおいて有利ですが、2019年当時の技術では高性能とモデム統合の両立は実現不可能でした。よって、性能を重視した結果モデムは外付けとなりました。

一方でSD765/765Gはモデムが統合されています。あくまで電池持ちやコスト削減を意識した“ミドルクラス”という位置づけであるため、当時の技術で5Gモデムをチップに統合できる程度に性能を抑えられたと考えられます。よって、このような大きな5Gの性能差が生まれました。

SD865などの外付けモデム(左はミリ波用モジュール)

ちなみに後に発売されるであろうSD888機種ですが、こちらは通信速度の性能においては先代のSD865と基本的に同等なので、新世代による大幅な速度向上はありません。

5Gを楽しむ目的でスマホを購入するには注意が必要

このように、5Gの通信速度に1.5倍以上の差があるため、屋内スポットなどのイベントスペースでは大きな速度差が生じる可能性があります

よって、機種変更を考えている方で5Gを楽しみたい、という場合はスマホ選びに注意が必要です。

普段使いはSD765/765Gで十分ですが、5Gの性能は満足できないかもしれません。多分そんな人いないと思いますけど。

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