サムスンは日本で”わざと”シェアが低下する戦略を取っている?

Galaxy

日本国内において、サムスンは展開する機種を絞り、またローカライズを施したうえでスマートフォンを展開しています。

しかし、ここ1年で従来より少し販売方針を変更したように見受けられます。

実際のデータを取り上げつつ、この方針の転換について考えてみました。

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国内シェアが低下傾向にある

実は、直近1年間でGalaxyの出荷シェアは大きく低下しています

IDCのデータでは2022年で9.1%を獲得していましたが、2023年では6.3%までに低下しており、成長率はマイナス39%を記録しているようです。

出所:IDC

円安による本体価格の上昇、物価高による買い控えの発生などといった外的要因が影響しているのは言うまでもありません。スマートフォン全体でも成長率は前年比マイナス11%とされており、2023年は余程の安売りをしなければ成長できない、厳しい1年であったことは想像に難くありません。

しかし、サムスンに関しては外的要因だけではなく、自社の方針転換によるものも起因していると筆者は考えています。

サムスンに何が起きたのか

では、Galaxyのシェアが低下した内的要因は何なのでしょうか。

廉価機種を出さなくなった

出所:Samsung Japan(2024年3月6日閲覧)

同社は低価格帯から高価格帯まで、様々な価格帯のスマートフォンを販売していました。ところが、ここ1年で製品ラインナップがやや変化しています。

執筆時点のラインナップを見てみると、サムスンは日本において、定価5万円を下回る低価格帯の製品を2023年以降発売していません

とくに最安値のGalaxyは2022年秋モデルのA23 5Gが最後であり、執筆時点で実に1年半近く後継機の音沙汰がありません。直販モデルのM23 5G(2022年春発売)も同じく、後継機の噂すらありません。

メーカーにとって廉価機種は安価なため市場規模が大きく、販売台数が伸びやすいことがメリットです。その一方でライバルは多く、価格を下げないと売れにくいことから薄利多売に陥りやすいというデメリットがあります。

特に昨今はインフレや円安により従来の価格を維持することが非常に困難になりつつあります。2023年にLenovo傘下となったFCNTも、原材料費の高騰が経営破綻した一因と発表しています。

また日本はバブル崩壊後30年間、デフレの状態が続きました。そのため日本人にはインフレを許容する文化が浸透しておらず、とくに廉価機種の値上げを許容できない消費者は多いはずです。

このような背景もあり、サムスンは当面の間、廉価機種の後継機を日本でリリースしないという判断を下しているのだと考えられます。

高価格帯の選択肢が増えた

ただ廉価機種が出なくなった代わりに、Galaxy SシリーズやZシリーズのストレージ高容量モデルがキャリアで発売されたり、サムスン直販で販売したりと、高価格帯の販路・選択肢を拡大させています。

高価格帯は低価格帯と比べて販売台数が減少する傾向にあるものの、価格を高く設定しても売れるため、原価率を比較的低く設定できます。

つまり高価格帯の販売を主力にすれば、従来より利益を増やすことが可能になります。

シェアの低下は必ずしも悪いことではない

「シェアが低下した」ということだけを聞くと悪いイメージを持ってしまいますが、この結果は必ずしも業績の悪化を意味するものではありません。

また、この方針転換は二度と廉価機種を出さないことを意味するわけではありません。

原材料費の高騰が落ち着いたり、日本でも継続的なインフレが前提にある欧米のような消費感覚が根付いたりすれば、再び廉価機種が展開される可能性は十分にあるでしょう。

方針転換によって利益を出しやすくなる可能性はあるものの、実際に従来より利益を伸ばすことができるのかはサムスン次第です。

いちマニアとしてニッチ路線への転換は少し残念に感じますが、今後も利益を出して生き残り続けて欲しいところです。


画像:Samsung Japan

参考

2023年第4四半期および通年の国内携帯電話/スマートフォン市場実績値を発表 (idc.com)

Samsung Japan 公式 | Samsung(ギャラクシー)

お知らせ・プレスリリース 2023年 | FCNT株式会社

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