物価高が続く2023年。スマートフォンの価格も例に漏れず高騰している傾向にあります。
そのため2~3万円台の普及価格帯は性能が据え置きか低下し、10万円以上の高価格帯は値上がりし続けているのが現状です。
そんな中それなりの性能で価格が抑えられた、5〜10万円(中価格帯)の端末がトレンドになりつつあります。
そこで、この価格帯で期待できそうなmotorola edge 40を購入してみました。
筆者は普段Galaxyばかり購入していますが、今回は敢えてこの機種をレビューしていきます。
スペック
WiFi | IEEE 802.11 a/b/g/n/ac/ax 2.4G/5GHz |
Bluetooth | 5.2 |
ディスプレイ | 6.55インチ pOLED |
リフレッシュレート | 144Hz |
解像度 | 1080 x 2400 |
寸法 | 黒:約158.43mm x 71.99mm x 7.58mm 青:約158.43mm x 71.99mm x 7.49mm |
重量 | 黒:171g 青:167g |
プロセッサ | Dimensity 8020 (2.6GHz, 2.0GHz) |
メモリ/ストレージ | 8GB / 256GB (外部メモリ非対応) |
Androidバージョン | 13 |
バッテリー容量 | 4,400mAh |
リアカメラ | 超広角:13MP 広角:50MP F1.4 |
インカメラ | 32MP F2.4 |
生体認証 | 指紋(画面内) / 2D顔認証 |
防水・防塵 | IP6X/IPX8 |
価格は一部販路を除き64,800円に設定されています。またブラックのみ背面が革風になっており、この影響によりカラーの違いでサイズ・重量が異なっています。
プロセッサはDimensity 1100のリネームであるDimensity 8020を搭載します。
そのほか日本へのローカライズも抜かりなく、防水・防塵やおサイフケータイに対応しています。
ベンチマーク結果
実機でAnTuTu V10、Geekbench 5および6の計測を行いました。なお、すべて室温28℃で計測しています。
AnTuTu
AnTuTu V10は冷却なしで830,000点、冷却ありで840,000点となりました。
30℃以下の本体温度でスタートすればスコアは安定していますが、連続で計測するとサーマルスロットリングが発生し、急激にスコアが低下する場面もありました。
Geekbench
数値だけで言えば、ミドルクラスというよりハイエンド寄りの印象です。
特にマルチコア性能はGoogle Tensor G2やSnapdragon 8 Gen 1など、2022年のハイエンドプロセッサに肉薄するスコアが出るようです。
実際に処理性能については申し分なく、少なくとも普段使いにおいては非常に快適です。
パフォーマンス総論
あくまで個人の主観にはなるものの、SNSやネットブラウジングなど、普段使いに関して一切もたつきを感じることはありません。
以上のことから、パフォーマンスに関してはほぼハイエンドと言って差し支えがないと思います。
ただ負荷をかけるとバッテリー消費量が顕著に増大し、発熱する点が気になりました。
ちなみにアプリ単位でのパフォーマンスはそれぞれの最適化具合に大きく依存します。
MediaTekプロセッサを搭載しているため、Snapdragon搭載機種よりも最適化が進みにくい傾向にある点には注意が必要です。
カメラをチェック
背面カメラについても簡単にチェックしました。以下それぞれの作例です。
ファイルサイズの圧縮は行っていますが、そのほかの加工は一切行っていません。
静止画
昼間
昼間、特に青空を写した場合、非常に彩度が高くなる傾向があるようです。
またMediaTekプロセッサ搭載機種特有のシャープネス感がmotorola edge 40でも見受けられました。
ダイナミックレンジが少々狭いようにも感じましたが、これに関しては値段相応だと思います。
夜間
比較的明るめの夜景はまずまずだと思います。強いて言うならば白飛びが少し気になりますが、概ね値段相応でしょう。
超広角はセンサーサイズ(1/3インチ)を考えると妥当だと思います。「詳細」項目にある「ナイトビジョン」で撮影すれば、幾分かマシにはなります。
少し暗い場所に移動して撮影してみたところ、超広角の通常モード(自動ナイトビジョンON)の写真が見るに耐えないものになりました。
長時間構えて撮影するナイトビジョンでの撮影はそこまで酷くないので、どうしても超広角で夜景を撮りたい場合はナイトビジョンでの撮影にすべきでしょう。
いずれにしても、夜景で超広角はおまけ程度に考えておいたほうが良さそうです。
動画
FHD 60fps 手ぶれ補正オンの設定、ジンバルなし手持ちの状態で簡単に撮影してみました。
※8秒(2MB)程度に切り抜いてありますが、通信量にはご注意ください。
歩く程度の手ブレであれば十分に補正が効いているように感じるものの、走ると画面の揺れが目立ちます。
また明るい場所が白飛びしており、動画においてもダイナミックレンジの狭さが少し気になりました。
ちなみに短時間の動画撮影で気になるコマ落ちは見られませんでした。
マイナスな部分ばかり言ってしまったのでプラスの部分も言っておくと、そもそもこの価格帯で手ぶれ補正オンかつ60fps撮影ができる機種は決して多くないです。この設定はGalaxy Sシリーズでさえ2021年からようやく対応した部類です。
よって6万円台の機種でこれが使えるだけでも、十分優秀な部類に入ると思います。
カメラ総論
筆者の撮影センスがないのは大前提にしても、motorola edge 40のカメラはイマイチな印象を受けました。主にDimensity 8020の画像処理能力が足を引っ張っているように感じます。
ただしこれらは全て初期ファームウェアでの作例であり、今後のアップデートにより改善される可能性があります。
ハードウェアをチェック
本体スピーカー音質
本体のスピーカー音質をチェックします。
今回はDolby Atmosをオンにした状態で、かつスマートオーディオ(デフォルト設定)を選択して録音しました。
※楽曲は以下から引用しました。
Track: Spektrem – Shine [NCS Release]
Music provided by NoCopyrightSounds.
Watch: • Spektrem – Shine …
Free Download / Stream: https://ncs.io/Shine
端的に言うと低音が弱く高音域が強い、重みのない音質です。
本体上部に刻印する程度にはDolby Atmosを謳っている割に、コンテンツ鑑賞が捗るほど良いスピーカーとは思えません。
Google Pixel 7と同じか少し良い程度だと思います。
薄型・軽量
motorola edge 40は非常に軽量で薄型です。横幅も72mmほどに抑えられており、かなり持ちやすいと感じます。
本体背面もブラックに関しては革風になっています。指紋がつきにくく滑りにくい質感のため、ケースなしで使いたくなります。
ディスプレイ
ディスプレイは非常に綺麗だと思いました。輝度も高く、直射日光下でもかなり見やすいです。
またリフレッシュレートは最大144Hzとなっており、非常に滑らかな体験を得ることができます。プロセッサの性能が高いことから、コマ落ちする場面もほとんどありません。
…が、筆者の目では120Hzと144Hzの違いが分かりませんでした。
バッテリー消費を考えて、基本的には「120Hz」か「自動」に設定するのが無難だと思います。
ちなみにリフレッシュレートは「自動」「60Hz」「120Hz」「144Hz」の選択肢があります。
中華スマホなどで時折見られる「アプリによって高リフレッシュレート設定でも強制的に60Hzまで落とされる」といった仕様は基本的になさそうです。
6万円台にしては品質が高いディスプレイを搭載していると思います。
余談ですが、ディスプレイがどこ製のものか気になったので、少しだけ調べてみました。
水滴を垂らしてサブピクセル配列を確認したところ、よくあるダイヤモンド配列のようでした。
この配列を採用しているメーカーは多いですが、モトローラの過去の実績と本体価格を考えると、このディスプレイはTCL CSOT製の可能性が高そうです。
なお採用メーカーは複数あり、他社製のディスプレイを搭載した個体も存在している可能性があります。
付属品
motorola edge 40には本体のほかに、ハードケース、急速充電器とケーブル、スタートガイドなどが付属しています。
近年珍しい付属品の充実具合なので、一部付属品についても触れておきます。
ケースは低クオリティ
残念ながら付属しているハードケースの質は低いです。
本体左右は保護しない形状であり、また装着しても本体にピッタリ収まらず歪んでしまいます。
もしかしたらブルーだとピッタリ収まるかもしれません。
同社の下位モデルであるgシリーズに付属しているようなソフトケースを想像していましたが、想像の斜め下をいくクオリティでした。
変に期待するよりは事前にケースを購入するか、ケースなしで使うほうがよさそうです。
充電器は汎用性高め
ケースのクオリティは酷い一方で、充電器はとても優秀です。
モトローラ独自規格であるTurboPower(Quick Chargeベース?)のほか、少なくともUSB PDのような標準規格にも対応している様子です。そのためGalaxyでも超急速充電が利用可能でした。
あいにく計測できる機器と充電についての専門的な知識を持ち合わせておらず一部断定できない部分があるものの、付属の充電器にしては汎用性が高いと思います。
ソフトウェアをチェック
motorola edge 40のソフトウェア周りについて、Galaxyユーザーの視点から評価します。
意外とカスタマイズされている
モトローラのUIはAndroid標準(AOSP)のデザインに近いです。そのためカスタマイズもほとんどないのかと思っていましたが、決してそうではないようです。
たとえばクイックパネルではWi-Fiがワンタップでオンオフできるようになっています。
やや地味ですが、痒い所に手が届く良いカスタマイズだと思います。
このように適宜カスタマイズされており、個人的にはGoogle Pixelよりも使いやすいと感じました。
※補足 Android 13標準のクイックパネルではモバイルデータ通信とWi-Fiが「インターネット」の項目に統合されており、Wi-Fiをオン・オフするには最低でも2回タップする必要があります(以下画像参照)。
モトローラの端末を使い込んだのは初めてですが、Galaxyユーザーの筆者としてはGoogle Pixelよりも使いやすいと感じました。
アップデート保証は?
モトローラの日本語公式サイトを見てみると、motorola edge 40のセキュリティアップデートは2028年1月まで行う予定のようです。
しかしデバイスのリリースが海外基準となっていることから、専用型番の国内モデルはこれに当てはまらない可能性があります。
ここまでの長期間保証はあまり期待しない方が良いかもしれません。
スクリーンショットの音
少なくともmotorola edge 40では、SIMを挿した状態だとシャッター音だけでなく、スクリーンショットの音も消すことができません。かろうじて小さい音なのが救いでしょうか。
Google PixelではAndroid 13から消すことができるようになったので、ここは残念ポイントだと思います。
しかもご丁寧にステレオで鳴動させているようで、スピーカーを塞いで音を小さくするといった対策も難しいようです。小さいながらもちゃんと音が鳴ります。
指紋センサー
画面内に搭載されている指紋センサーは精度も悪くなく、十分快適です。
Google Pixelとは異なり、画面がオフになった状態で指を当ててもロック解除できます。毎回傾けて画面を点灯させたり、電源ボタンを押す必要はありません。
この点はGalaxyと同様の挙動で、Galaxyユーザーとしてはかなり使いやすく感じます。
発熱をチェック
motorola edge 40は冷房が効いた室内でも本体温度35℃近くになりやすく、普段使いにおいても発熱が気になります。
室温28℃の屋内環境下、リフレッシュレート120HzでTwitterを20分程度見たところ、バッテリー温度が34℃近くまで上昇しました。
一般的にリフレッシュレートが高いと発熱しやすくなりますが、それを踏まえても気になるレベルだと思います。
Snapdragon 888・8 Gen 1搭載の機種を使っている時に似た感覚です。
バッテリー持ちをチェック
バッテリー持ちはあまり良くない印象です。
普段の使い方で満充電の100%から約20%まで、リフレッシュレートは自動(≒原則90Hz)で計測しました。
この条件で、画面点灯時間は9時間21分となりました。
Galaxyとは表記が異なるので直接比較はできないものの、これは当サイトで検証した端末のうちGalaxy S21 FEに近いバッテリー持ちです。
容量が1割以上少ないGalaxy S23のほうがバッテリー持ちは良い傾向にあるので、やや物足りない印象を受けました。
120Hz以上のリフレッシュレートに設定していると更にバッテリー持ちが悪化するので、ハードな使い方では1日持たないかもしれません。
急速充電をチェック
付属している68Wの急速充電器を用いて、20%→100%(満充電)までの時間を計測したところ、33分で充電が完了しました。
その場所の気温によって充電時間は左右されますが、涼しい場所なら大体30〜40分程度に収まりそうです。
Galaxyではいくら金を積んでもこの充電速度にならないので、価格帯の割には速いのではないでしょうか。
まとめ
◯motorola edge 40のココが良い!
- 高品質なディスプレイ
- 適度にカスタマイズされたUI
- 性能の割に安価
- 付属品が豪華
✕motorola edge 40のココがダメ!
- カメラがやや弱い
- バッテリー持ちがあまり良くない
- 発熱が気になる
- フィルムが貼られていない
正直に言うと、motorola edge 40に無難さは感じられません。
販路もかろうじて大手MVNOと限定的であり、大衆向けというよりはマニア向けと言えるでしょう。
とはいえ抜きん出て良い点もあり、良く言えばメリハリのある端末だと思います。悪く言えば極端ですが…。
またエッジディスプレイにも関わらず、画面保護フィルムは貼り付けられていません。画面に傷をつけたくない場合、自力でフィルムを探して貼り付ける作業が必要になります。
なおmotorola edge 40と競合になるであろうAndroidスマートフォンは、同じく6〜7万円のGoogle Pixel 7aやGalaxy A54 5Gなどが挙げられます。
この2機種と比べてmotorola edge 40が優れている点は、ずばりハードウェアのコスパだと思います。
ストレージは他2機種と比べて倍の保存領域があり、付属品も豪華。それでいてプロセッサの性能も申し分なく、ディスプレイも非常に綺麗です。定価6万円台で購入できるものにしてはお得だと感じました。
一方で、画像処理のソフトウェアを含むカメラ周りは少々詰めが甘いです。ただ検証時期が発売して間もないタイミングであることから、今後のソフトウェアアップデートに期待ということにしておきます。
特にハードウェアを重視するユーザーにはmotorola edge 40がオススメです。
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