時代が進むにつれて大型化していく携帯電話、スマートフォン。
これには様々な理由がありますが、より多機能となったことでバッテリー持ちが悪化し、本体を大型化させて物理的にバッテリー容量を確保せざるを得なかったり、スマートフォンで動画を視聴することが当たり前となり、大型化の需要が高まったことが考えられます。
しかし日本では小型を求める声が大きいような気がします。
何故日本だけ小型のスマートフォンが人気なのでしょうか。今回は実際の調査結果を見つつ、この謎について考えてみます。
世界で小型は売れにくい
まず、本当に日本だけ小型が人気なのか、実際に数字を見てみます。
アメリカの調査会社CRIP(Consumer Intelligence Research Partners)によると、2021年のアメリカでのiPhone販売シェアは、iPhone 12シリーズでは(12 Proが少々低いですが)12、12 Pro、12 Pro Maxの3モデルで概ね同程度のシェア率に対し、最も小さい12 miniのシェアだけ極端に少ない結果となっているようです。9to5Macが報じています。
また調査会社Strategy Analyticsの調査では、2021年第2四半期(4~6月)、全世界のスマートフォンの売り上げで上位3機種がiPhone 12、12 Pro、12 Pro MaxとiPhone 12シリーズ3機種のみで世界のスマートフォンの売り上げ3割以上を占めていたようです。
一方で10位以内にランクインはしているものの、上記iPhone3機種と比べ12 miniはかなりシェアが少なく、Galaxy S21シリーズ3機種より少ない売り上げに留まっています。
このようなことから、アメリカだけに留まらず世界で小型のiPhone 12 miniが相対的に不人気であることが分かります。
日本では小型が人気
一方で日本では大型のスマートフォンは他国に比べて人気がなく、BCN+RによるiPhone 12シリーズでのモデル別販売台数シェア統計は発売当初で日本が12、12 mini、12 Proそれぞれ概ね同程度のシェア、最も大きい12 Pro Maxだけがこれらの半数以下のシェアとなっているようです。
同じ調査方法ではないので明確に比較できるわけではないですが、日本では「小型が売れやすく、大型が売れにくい」という傾向にあることは間違いないでしょう。
世界最大の鉄道大国、日本
続いて何故日本だけ小型が人気(大型が不人気)なのかを考察してみます。
日本ではそれなりの都市であれば移動手段に必ず「鉄道」という選択肢があります。
また山が多いという地形の関係で都市部(平野・盆地部)に人口が集中する傾向にあり、その人口密度の高さから大量輸送が可能な鉄道という移動手段が有利になりやすいです。
このような事情から我々日本人は通勤をはじめとした移動手段に「鉄道を利用する」ということが特に都心部では非常に多く、その移動の合間にスマートフォンを利用するため、つり革に捕まりながら片手で使える小型の携帯電話の需要が他国より高いのだと考えられます。
主流の文字打ちはフリック入力
日本ではケータイ打ちから派生したフリック入力が主流です。
一方で諸外国ではPCと同じフリックを行わないQWERTYキーボード、または似たような配置のキーボードが主流であることが多いです。
日本語と地理的にも言語的にも近い韓国の主流キーボード配列でさえフリック入力はしません。そもそもスライド(フリック)して文字を打つことのほうが稀なのです。
つまり、世界では両手でスマートフォンを持って文字を打つことが多く、片手で文字を打つ文化がここまで根強いのは日本くらいしかないということです。
皆さんも外国人が片手で文字を打っている姿はあまり見たことがないのではないでしょうか。両手で打っている姿のほうが想像しやすいと思います。
そしてキーボードの数が多いということは、即ちキーボード一つ一つのサイズが小さくなるので、一般的に小型のスマートフォンは文字が打ちづらくなります。
世界で大型のスマートフォンが好まれる傾向にあるのは、この点でも必然であるといえるでしょう。
逆に日本で小型が好まれるのは、片手の文字打ちが主流であることが深く関係していると考えられます。
根強い「ガラケー」の文化
そもそもこの「片手打ち」の文化はガラケー時代までさかのぼります。
日本が鉄道大国であることは今に始まったことではなく、戦後の高度経済成長期を象徴するものでもありました。よって、携帯電話が普及し始めた20世紀後半ごろには既に片手で文字を打つ文化が根付いていたと考えるのが自然でしょう。
以前から日本ではシャツの胸ポケットに収まるような小型の携帯電話の需要が高く、それに伴って携帯電話(ガラケー)は折り畳んでコンパクトにできる、いわゆる「クラムシェルタイプ」が主流になったと考えられます。
2010年以降、急速に画面で操作する板状のスマートフォン(主にiPhone)が普及しましたが、やはりガラケーの文化が根強く残っており、日本では未だにこのコンパクトさを求める声が大きいのです。
日本はいつの時代もガラパゴス
日本人が小型のスマートフォンを好む傾向にあるのは、独特の「ガラケー文化」によるものが要因かもしれないという話でした。
一方でスマートフォンを製造している人気のメーカーは、大半が日本だけに製造しているわけではありません。
またそれぞれ営利を求める企業であるため、世界で売れない傾向にある小型のスマートフォンを、わざわざ日本だけに向けて製造するメリットはほとんどありません。
つまり、今後小型スマートフォンのラインナップが次々と消失していくことは避けられないと考えています。
ガラパゴスであることが悪いというわけではありませんが、少数派が淘汰されるのは仕方のないことです。時代の流れを受け入れるしかないのかもしれません。
アイキャッチ画像:ぱくたそ
参考
iPhone 12シリーズの販売初動、キャリアトップは“ソフトバンク” – BCN+R (bcnretail.com)
iPhone 12 line accounts for 63% of US iPhone sales in Q3 2021 – 9to5Mac
コメント
スマホが大型化するのは構いませんが、それよりも深刻な問題として、大型化に伴って重量まで増えてしまっていることが挙げられます。
ローエンドですら200g以上は当たり前、なんて状況ですよ。また、Pixel 6が無印・Pro共に200gを超えてしまったのが記憶に新しいです。
大型化のほうはは利便性の向上にもつながりますが、重量化は何の得にもなりません。腕は疲れますし、落下させたときの衝撃・ダメージも大きくなります。
なぜメーカーはスマホの重量に無頓着になったのでしょうか?あのGoogleですら、それに迎合してしまったことに、私は驚きを隠せません。