なぜ日本ではSIMフリーのハイエンドGalaxyが販売されないのか?

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日本では近年eSIMの推進や他社バンドへの対応など、総務省によって携帯電話業界が大きく変化し続けています。

また大手通信事業者(キャリア)に囚われないSIMフリー(オープン市場)モデルが注目されており、度々インターネットで話題になります。

しかしサムスンは日本で積極的にSIMフリーモデルを展開していないのが現状です。

2022年に比較的安価なM23 5Gを販売した実績はあるものの、限定モデルを除き、少なくともここ数年でSIMフリー版のハイエンドGalaxyを販売したことはありません。4月の発表でもGalaxy S23シリーズは通信事業者向けモデルのみの発表でした。

なぜここまで話題になっているのにSIMフリー版を販売しないのでしょうか?普段よりGalaxyを取り扱っている本サイトで考察を行いました。

※留意事項
厳密には異なりますが、便宜上「格安SIM市場=SIMフリー市場」として執筆しています。
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リスクが高すぎる

そもそもの市場規模が狭い

まず大前提として、SIMフリー市場への展開は非常にリスクが大きいです。

というのも、大手キャリアの市場とは異なり、格安SIM(MVNO)をはじめとしたSIMフリー市場は、相対的に市場規模が非常に小さいからです。

以下は総務省が公表している2022年12月時点でのデータを円グラフにしたものです。

参考:総務省

2022年12月の時点で、格安SIMを利用している人はざっくり計算で7人に1人です。さらに格安SIMユーザーは必ずしも契約のたびに新品のスマートフォンを購入するとも限りません

比較的多くのユーザーが現在使用している機種そのままで乗り換えるため、大手通信事業者よりも乗り換え時に携帯電話を購入する確率は高くないはずです。そのためSIMフリー版の市場規模はキャリア版と比べて10分の1程度しかないと考えるのが妥当かもしれません。

この市場規模では採算が取れるかすらも不透明です。SIMフリー展開に消極的になってしまうのは仕方がないとも捉えられます。

SIMフリー市場と高級機種は相性が悪い

またSIMフリー市場でスマートフォンを購入する多くの格安SIMユーザーは、安さを求めて格安SIMを利用しています。よってスマートフォンに投資する金額が大手キャリアのユーザーと比べて少ない傾向にあります。

MM総研の資料を見てみると実際にデータとして表れていることが分かります。

出典:MM総研

2023年1月の調査結果によると、スマートフォンなどの端末を購入する平均金額は、大手キャリアであるMNOで73,757円、格安SIMであるMVNOで53,590円となっており、2万円以上少ない金額となっています。

つまりSIMフリー市場のほうが安価なスマートフォンを求める層が厚く、逆に高いものを求める層が少ないということになります。

Galaxy S23の定価は安くとも13万円以上であり、格安SIMの平均端末購入価格をダブルスコア以上で超過しています。上記の統計データから推測すると、この価格のスマートフォンを求める格安SIMユーザーは非常に少ない、ということが容易に想像できます。

SIMフリー市場でハイエンドGalaxyを販売しても、採算が取れない可能性は高いと言えるでしょう。

既に通信事業者と深い関わりがある

またサムスンはNTTドコモやKDDIと10年以上もGalaxyの取引があり、市場規模を考えてもこの2社は非常に大口顧客であると言えます。

逆に言えば、サムスンは日本におけるスマートフォン売上の大半を大手キャリア2社に支配されている状態に陥っています。これは非常に脆弱な収益構造であり、大手キャリアに弱みを握られていると言っても過言ではありません。

このような立場で積極的にSIMフリー販売を行うことは非常にリスクが高いと言えます。長年踏み固めた土台を崩すことになりかねません。

この結果、サムスンはSIMフリー展開に消極的になってしまっていると考えられます。

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まとめ

客観的に見ても「及び腰になって当然」と思えるほど、メーカーによるSIMフリー展開は高い障壁が多いという事が分かります。

しかし長期的に企業を存続させるためには、積極的にリスクの高い行動にも挑戦することが必要であると筆者は考えています。

サムスンには目先の利益や短期的な将来に囚われず、積極的に新しいことへチャレンジしてほしいところです。


画像:Samsung(日本)

参考

総務省|報道資料|電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表 (令和4年度第3四半期(12月末)) (soumu.go.jp)

スマートフォン利用者の月額利用料金は4,458円 ≪ プレスリリース | 株式会社MM総研 (m2ri.jp)

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