楽天モバイルは先日東名阪以外の1.7GHz帯の20MHz幅×2を獲得したという報道が記憶に新しいですが、それとは別にエリア展開に有利なプラチナバンドの獲得の可能性も浮上してきました。
携帯のプラチナバンド、再配分が「適当」 総務省: 日本経済新聞 (nikkei.com)
まだプラチナバンドは獲得すると決まったわけではありませんが、もし獲得するとなるとどの周波数になるのでしょうか。
また、獲得してもなお山積みの課題があるので、東名阪以外の1.7GHz帯も加えてご紹介したいと思います。
なお妄想も含めた他のプラチナバンド割当て案はこちらの記事をご覧ください。
東名阪以外ってどこ?
楽天モバイルが新たに割り当てられた周波数は東名阪以外の1765~1785MHz、1860~1880MHzです。人口密集地帯の東名阪エリアではNTTドコモが既に利用している周波数のため、東名阪以外に限るという制限があります。
ではこの「東名阪エリア」は具体的にどの地域を刺すかご存じですか?
総務省によると
一、八五九・九MHzを超え一、八七九・九MHz以下の帯域の周波数(以下「一・七GHz帯東名阪バンド」という。)にあっては、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、岐阜県、静岡県、愛知県、三重県(尾鷲市、熊野市及び南牟婁郡を除く。)、滋賀県、京都府(福知山市、舞鶴市、綾部市、宮津市、京丹後市、北桑田郡、船井郡、天田郡、加佐郡及び与謝郡を除く。)、大阪府、兵庫県(豊岡市、養父市、朝来市、宍粟市、丹波市、篠山市、西脇市、多可郡、神崎郡、飾磨郡夢前町、宍粟郡、揖保郡新宮町、佐用郡、赤穂郡及び美方郡を除く。)、奈良県(吉野郡十津川村及び下北山村を除く。)及び和歌山県(御坊市、田辺市、新宮市、日高郡、西牟婁郡及び東牟婁郡を除く。)の区域(行政区画に変更があった場合においても、当該区域は、なお従前の区域による。)。
総務省 電波法第二十七条の十二第一項の規定に基づく一・七GHz帯又は二GHz帯の周波数を使用する特定基地局の開設に関する指針 (soumu.go.jp) 二-2-(二)
とあります。文字にすると非常に分かりづらいですね。
ということで、だれでも直感的に分かるよう日本地図に当該地域をオレンジで塗りました。
このようになります。
つまりこのオレンジのエリアがドコモの東名阪1.7GHz帯が展開されている(展開可能な)地域となります。実は近畿は全ての地域が東名阪エリアではないのです。実際、JR山陰線では園部駅付近から以北、紀勢線では湯浅駅を南下したあたりからドコモのLTE Band3はいなくなります。
逆に言えば、楽天モバイルの東名阪以外の1.7GHz帯というのはこのオレンジで塗られていない部分ということになります。どの程度エリア化を進めるか興味深いですね。
※白地図はCraftMAPさんのフリー素材をお借りしました。
プラチナバンドとは?
プラチナバンドというのは「1GHz未満の周波数が低い電波帯」を指します。具体的にはauとドコモの800MHz帯(B18及びB19)・Softbankの900MHz帯(B8)を指すことが多いです。
700MHz帯(B28)も携帯電話向けの電波で存在しますが、こちらは全キャリア共々メインとして整備していないので、あまりプラチナバンドとしては話題に上がりません(今後5GではauとSoftbankでメインの周波数になると思われます)。
電波というのは同じ場所で同じ周波数を使うということが基本的に出来ないので、携帯キャリアだけでなく、電波を利用する様々な事業者とお互い干渉しないように調整しなければなりません。
そして物理的な特性上、周波数が低ければ低いほど障害物があっても遠くに届きやすかったり、屋内などに回り込みやすく、エリア(カバレッジ)確保に有利です。
つまりそれだけ「1GHz未満の電波は価値(需要)のある周波数である」ということを指しており、価値の高いプラチナに例えてこのような呼称が用いられているというわけです。
なお、このプラチナバンドを所持していない基地局の設備を持つ携帯電話の事業者は2021年4月現在では唯一楽天モバイルだけです。
なので以前から楽天は総務省にプラチナバンドの要求を行っていましたが、ついに携帯電話向けの電波再編の計画を検討されるようになったようです。
楽天が欲するプラチナバンドの本命は800MHz帯か
現在楽天モバイルではauからローミングという形で、自社の回線ではカバーできないエリアを確保・補完しています。この周波数は基本的に800MHz帯であるLTE B18もしくはB26で提供されています。
よって、この現在使用している周波数に限りなく近い800MHz帯を狙っていると考えられます。
具体的に言えば、auが所持している周波数の後半5MHz幅*2とドコモが所持している周波数の前半5MHz幅*2の合計10MHz幅*2です。
この帯域は現在2社共に3Gで利用している帯域であり、どちらも停波が予定されています。順当にいけば、両社ともこれらのLTEプラチナバンドは順次15MHz幅となる予定です(既にLTEが15MHz幅となっている場所も存在します)。
しかし、もし楽天にこの周波数が割り当てられた(横取りすることになった)場合は、これらの30MHz幅*2を3社で分け合うという形になるでしょう。
あくまで例となりますが、このように楽天がauとドコモの間に割り込む場合、楽天はB26のみでしか運用することが出来ません。
楽天版のGalaxyやauの一部機種はB26に対応しておらず、B18のみにしか対応していないので、いずれ一部の顧客は機種を変更しなければなりません。楽天がその費用を負担してくれるかは不明です。
ただ再編がまだドコモの3GであるFOMAが停波していない時点(2026年4月よりも前)で行われると思われるため、しばらくはau側の5MHz幅*2で運用すると考えられます。それまではB18で運用するかもしれません。なおauの3G停波は2022年3月末です。
この周波数はauローミング回線と近い周波数なので、他候補の周波数と比べて移行に時間と手間を要しません。auとドコモの主張を無視すれば最も妥当な選択肢だと思われます。
とはいえ電波の管理に関しては総務省が牛耳っている状態なので、いくらauとドコモが拒否したところで、電波の割り当てがどうなるかは総務省次第となるでしょう。
楽天モバイルはミドルバンド以下の電波取得がカギ
現在楽天は全国バンドの1.7GHz帯20MHz幅*2のみしか所持しておらず、LTEとして展開している周波数の帯域幅が非常に狭いです。その影響でトラフィックを捌くことが難しく、非常に混雑しやすいようです。
現状は人口密集地帯にて基地局1局あたりのエリアを狭くすることでなんとか凌いでいますが、いずれ限界が訪れるでしょう。これを解決するには新たな帯域を追加で展開するしかありません。
しかし5G向けに割り当てられた既存の周波数では面的なエリアカバーは困難なため、プラチナバンドまでいかずとも、比較的広範囲をカバーできる2GHz以下のいわゆる”ミドルバンド”は喉から手が出るほど欲しいはずです。
そんな今、東名阪以外の1.7GHz帯を新たに取得し、新たなミドルバンド取得への第一歩となったわけです。まあ筆者の主観に基づいた考察ですが。
余談ですが、実は破産した事業者が返納した、長年空き地となっている帯域が存在します。それはLTE Band34として運用できる2010~2025MHzの帯域です。
個人的に是非この帯域を楽天に割り当ててほしいものですが、なかなか厳しいでしょうかね。そもそも近年この周波数について総務省ですら特に言及していないようなので、これが活用されることはもうないかもしれません・・・。
楽天モバイルが他キャリア3社とエリアと速度で張り合えるようになる時代はいつ来るのでしょうか。今後も引き続きいろんな意味で常識を覆してもらいたいところです。
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