日本で発売されているGalaxy Aシリーズは比較的低スペックのものが多く、ハードユーザーにとっては満足できないレベルのものばかりです。しかし、グローバルでは十分なスペックを備え、なおかつ5Gに対応している廉価モデルも発売されています。
今回はそのモデルの一つであるGalaxy A71 5Gの日本人初レビューを、筆者がメインで使用している同メーカーのフラグシップであるGalaxy S20+と比較しながら行います。
これは何?
A71 5Gというタイトルにしていますが、Galaxy A Quantumが今回レビューする端末の正式名称です。
本機種はGalaxy A71 5Gの一種で、韓国キャリアSKテレコムで発売されているキャリア専売モデルです。本機種は通常モデルにはないセキュリティーが強化された量子チップというものが搭載されており、仮想通貨を安全に保管することができる機種となっています。しかし、筆者は仮想通貨に手を出していないので、量子チップに関してのレビューは省略します。
そのほかは全てA71 5Gと同等です。
スペック(抜粋)
SoC | Exynos980 2×2.2GHz + 6×1.8GHz |
RAM | 6GB/8GB LPDDR4X |
ROM | 128GB |
サイズ | 162.5 x 75.5 x 8.1 mm |
重さ | 185g |
バッテリー | 4500mAh |
外部端子 | USB typeC, 3.5mm ヘッドホンジャック |
メインカメラ① | 64MP F1.8(広角) |
メインカメラ② | 12MP F2.2(超広角) |
メインカメラ③ | 5MP F2.4(マクロ) |
メインカメラ④ | 5MP F2,2(被写界深度センサ) |
動画性能 | 最大4K30fps |
インカメラ | 32MP F2.2(広角) |
動画性能 | 1080p30fps |
生体認証 | 指紋(画面内光学式)、顔(2D) |
OS | Andorid10 One UI 2.1~ |
ディスプレイ | SuperAMOLED Plus |
サイズ | 6.7インチ |
解像度 | 1080 x 2400 |
画素密度 | 393ppi |
WiFi | IEEE 802.11a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz) |
Bluetooth | 5.0 |
GSM | 850/900/1800/1900 GHz |
W-CDMA | B1/2/4/5/8 |
FDD LTE | B1/2/3/4/5/7/8/12/13/17/20/26/28/66 |
TDD LTE | B38/40/41 |
NR(TDD) | n78 |
日本では基本的に入手できないため、スマホバイヤーの方に現地の中古品を輸入代行していただきました。本体のみで同梱品はなしです。44000円でしたが、現地の新品価格は65万ウォン(約6万円弱)です。





本体背面ですが、プラスチックのため傷はつきやすいので、裸での使用はおすすめできません。側面は金属だと思われます。

パンチホールのサイズはNote10シリーズくらいで、ベゼルの太さは顎含めてS10と同じくらいです。

S20+(左)と比較します。パンチホールがかなり大きく見えますが、普段使いでは気になりません。
実機ベンチマークスコア
本機種に搭載されているExynos980はミドルハイクラスに分類されます。日本では馴染のないチップセットですが、大体Snapdragon765Gと近いです。実機でantutu v8とGeekbench5の計測を行いました。


Snapdragon765Gと比較して、若干CPU性能が高く、GPU性能が低い程度で、スコアは大体同程度です。どちらも普段使いでは快適に使用できるスペックです。
そのほかゲームはMinecraftや原神を試しにプレイしてみました。
前者に関してはデフォルトのグラフィック設定で高速移動すると10fps以下になってしまいました。後者の初期マップは20~25fpsほど出ているようですが、ギリギリ推奨スペックに届かないレベルなので、ストーリーを進めていくとグラフィックが厳しくなるシーンが出てくる可能性があります。
765G同様3Dゲームでは若干グラフィックを落としてプレイする必要があります。
カメラ性能
性能差が大きく表れる夜景を撮影しました。Galaxy S20+の写真と比較していきます。
なお、どちらも夜景モードを使用しています。


明るい夜景では大きな差は現れませんでしたが、若干A Quantumのほうが白飛びを抑えきれていないように見えます。


暗い夜景では大きく差が出ました。細部まではっきりしており、メリハリのあるS20+の写真に比べてA Quantumは空に大きくノイズがかかり、建物の細部もぼやけて全体的にのっぺりしています。観覧車あたりが特に顕著です。
どちらもメインカメラで撮影しましたが、どうやらA QUantumのほうが若干画角が広いようです。
カメラ性能はしっかりとコストカットされている印象です。
メインカメラのセンサーはソニー製のようですが、そこまで良いものではないのでしょうか?ただ、ミドルクラスにしては健闘していると思います。
動画についてですが、30fpsのスーパー手振れ補正モードではそれなりに手ぶれ補正が効く一方で、60fpsだと画面酔いするレベルで不安定です。サンプルを撮影しましたが、不快になる方がいそうな程酷いので今回は添付を見送りました。
いずれにせよ動画性能に関してはかなり厳しく、「一応撮れるだけ」と言わざるを得ない性能といえます。
ミドルでも健在 痒いところに手が届くUI
ところどころに癖を感じる中華スマホにうんざりしていたので本機種を購入したのですが、やはり世界シェアトップのメーカーのスマホは安定感があります。
素のAndroidをよりシンプルに設計したサムスンのUIは誰にでもオススメできるものと言えるでしょう。
フラグシップにも搭載されているショートカット機能であるエッジパネルもしっかり搭載されています。ただ、フラットディスプレイなので若干S20+より引き出しづらい気がします。

また、これはその他のGalaxyにも言えることなのですが、サイレント通知にするかなどの通知の詳細設定が設定アプリ内に存在しない点が唯一残念な点だと感じます。
そのアプリの通知を長押しでサイレント通知にすることはできるようですが、通知が届かなければ変更することができません。

その他日本で発売されているGalaxyとUIはほぼ同じなので割愛します。

削れるものは削っている
ミドルクラスなだけあり、しっかりとコスト削減できるところは削減されている印象です。これは悪い意味ではありません。不満に感じやすい点は妥協せずしっかりとコストをかけており、ストレスをあまり感じないように考えて作られています。あまり頻繁に使わないような点だとか、余分な機能はしっかりとコスト削減されているようです。
以下S20+と比べてコストカットされている部分を抜粋して挙げていきます。
- モノラルスピーカーである
上部には電話用のスピーカーであり、電話以外では音が鳴りません。なおかつスピーカーに関してはDolby Atmosにも対応していません。しかしイヤホンジャックはあるうえ、BluetoothコーデックもaptX等に対応しているので、スピーカーやイヤホンを接続すれば問題ありません。
スピーカー音質は3年前のフラグシップGalaxyに近いです。
- 高リフレッシュレートに対応していない
Aシリーズでは一台も対応していない(フラグシップモデルの付加価値である)ので、対応していないのは仕方ないでしょう。これが必要であればS20FEを購入したほうが良いでしょう。ディスプレイ品質は悪くなく、解像度もFHD+で十分綺麗ですし、直射日光下の視認性もバッチリなので十分高品質です。
- 背面がプラスチックである
傷がつきやすいという点では非常に残念なポイントですが、ケースを使用すれば問題ありません。プラスチックであるかどうかは見た目ではほとんどわからないですし、5G対応Aシリーズ独特のツートンカラーは上品でチープさを感じません。
- ワイヤレス充電非対応
ワイヤレス充電、使っていますか?筆者は使っていません。また、この機種は有線で25Wの急速充電に対応しています。20%から1時間強で100%充電できるので、ミドルクラスとしては十分でしょう。
- 指紋認証は光学式
フラグシップGalaxyの指紋認証は超音波式です。光学式は2Dの写真として指紋を登録していますが、超音波式3Dで登録します。よりセキュアなのは超音波式ですが、光学式はこれよりも低コストであることから本機種は光学式を採用したのだと思われます。
基本的な認証速度や精度に大きな違いはないはずですが、光学式だと”センサー部分を明るく照らす”という超音波式には必要のない手間が余分にかかっているため、画面オフからの指紋認証速度がかなり遅いです。またセンサーの位置もかなり下部なので、S20+を使用しているとなかなか慣れません。


指紋認証の位置は統一してほしいですね。
バッテリー持ちはそこそこ良い
本機種は60HzでFHD+解像度時のS20+と同程度か少し良い程度のバッテリー持ちです。
ミドルクラスなのでもう少し良いかと思っていましたが、ミドルクラスにしては性能が高いのでこの程度なのでしょう。ゲームプレイ時の減り方はフラグシップより明らかに少ないですが、普段使いにおいてはあまり大きな差はないようです。
とはいえ相当ハードに使っても余裕で1日は持つので、バッテリー持ちはかなり良いほうだと思います。
対応バンドについて
スペック表にある通り、本機種は大手キャリア3社と楽天モバイルの4Gにほとんど対応しています。
以下筆者が検証した結果です。
- Softbank:プラチナバンドまで4G通信対応(5G通信および通話は未検証)
- au:プラチナバンドまで4G通信・VoLTE対応(5G一部利用可)
- docomo:一部プラチナバンドまで4G通信・VoLTE可能(5Gは未検証)
- 楽天モバイル:4Gは自社回線・パートナーエリアともに4G通信・VoLTE利用可能(5G利用不可)
未検証ですがSoftbankはVoLTE非対応である可能性が高いです。3Gでは通話できそうなので、現状は問題なさそうです。5Gは未検証ですが、周波数的におそらく掴まないと思われます。
auは4Gだとおおむね対応しています。5Gもn78のsub6帯は利用できました。なお、最新バージョンでは4Gから5Gに転用された3.5GHz帯でも利用可能でした。
docomoもB19のプラチナバンドをB26で掴むことができればプラチナバンドも利用可能です(一部地域)。未検証ですが、韓国版なのでn78のsub6帯は利用できる可能性が高いです。
※B26はB19およびB18を内包しています。B19は現在進行形でB26にて掴むように整備中です。
楽天モバイルはLinkアプリ含めて問題なく利用できました。SMSもパートナーエリアや自社回線問わず利用できるので、すんなり認証できました。使ってみて不便は感じませんが、5Gに関しては一切掴みませんでした。
Galaxyはグローバルモデルでもau系のSIMと相性が非常によく、特に高度な設定をせずに電話も利用できます。本機種も例外ではなく、au系SIMを利用している方にもオススメできます。
顔認証の重大欠陥
これはA71 5Gに限ったことではなく、今年発売されたGalaxy全般に言えることですが、顔認証がまともに使えません。
機能としては存在しますが、セキュリティを重視しすぎた結果なのか、このような使いにくい仕様になっています。

24時間ごとにパスワードを要求されるのはまだ許容できるのですが、顔認証を設定すると、たった4時間スマホを触らないだけで生体認証のロック解除は利用できなくなり、その都度パスワードが要求される仕様になっています。
4時間スマホを触らないことなんてよくあることなので、忙しい人だと開くたびにパスワードを要求されるなんてこともあるでしょう。
顔認証をオンにしなければこのような問題は起きないので、ないものだと割り切ってオフにしたほうがよさそうです。
まとめ
◎良いところ
- 手頃な価格で高品質
- 新設設計の使いやすいUI
- 将来のアップデートが3回ほど保証されている
- S20+用のフィルムと一部互換性がある
✕悪いところ
- 5G対応Aシリーズ自体入手困難
- 背面が傷つきやすい
- 高リフレッシュレートに対応していない
- 顔認証が実用的ではない
「シャッター音がうるさい(消せない)」「シングルSIMである」といった点は韓国版であるためなので、悪いところには記載していませんが、韓国版Galaxyを購入の際は注意が必要です。
また、海外版Galaxyは原宿での修理やフィルム貼り付けサービスなどを一切利用することができません。
au系SIMとの相性が良いですが、対応バンドは販売地域によって大きく異なります。他国のA71 5Gでは利用可能エリアが狭くなってしまう可能性があります。
スペックでは劣りますが、同じ値段で入手したiQOO Z1よりは圧倒的に満足しています。
中華メーカーのスマホを多く使用してきましたが、ハードウェアよりソフトウェアの完成度が高い製品のほうが私は好みです。
販路の問題やコロナの影響でほぼ間違いなくGalaxy A Quantumを日本人で初めて入手していますが、中身は一般人にもオススメできる非常に無難な機種です。
日本で入手するには基本的に輸入代行業者を経由する必要があります。現地の通販サイトでアメリカ版A71 5Gを購入することができるようですが、1ヵ月ほど輸送に時間がかかるうえ、キャリアによるSIMロックがかかっている可能性や日本の周波数にほとんど対応していない可能性があります。もし購入するのであれば、ご自身でしっかり調べたうえでの購入をおすすめします。
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